企業版ふるさと納税がつないだ、技術と人、そして地域の未来~株式会社ローヤルエンジニアリング~
【画像】包括連携協定締結式の様子。前列中央、黄色い法被を着ている方が株式会社ローヤルエンジニアリング代表取締役の水登健介さん。水登さんの右横で東京ヤクルトスワローズのユニフォームを着ている方が、西川町長の菅野大志さん。
建築設備の施工・保守管理を行う株式会社ローヤルエンジニアリングは、企業版ふるさと納税の制度を活用し、山形県西川町と連携しながら、自己処理型トイレの開発・実証実験に取り組み、製品化を実現しました。
創業40周年という節目をきっかけに始まった同社の挑戦は、技術開発にとどまらず、人と人とのつながりや地域との関係づくりへと広がっています。今回は、同社代表取締役の水登健介さんに、企業版ふるさと納税を活用した取り組みの背景や、西川町との協働から得られた学びについてお話を伺いました。
「この町と一緒にやりたい」。企業版ふるさと納税が結んだ西川町との出合い
同社が企業版ふるさと納税に取り組んだ背景には、創業40周年という大きな節目がありました。「40周年を迎えて、何か新しいことをやりたいという思いがあり、地域貢献につながることができないかと考えていたのです。でも正直、最初は企業版ふるさと納税のことは全然知りませんでした」と水登さんは語ります。JTBの紹介で制度について話を聞くなかで、寄付を通じて自治体と直接つながれる点に魅力を感じたといいます。
企業版ふるさと納税ポータルサイトに掲載した同社の情報に対して、複数の自治体から提案があり、そのなかから寄付先として西川町を選定しました。寄付先を決めた要因は菅野大志町長でした。「唯一、首長ご本人が前面に出てきてくださったのが西川町でした。発信力や行動力、そして圧倒的な熱意に強く惹かれたことが最大の選定理由です。また、菅野町長も私も東京ヤクルトスワローズのファンであり、その点で意気投合したことも信頼関係の構築を後押ししました」と水登さんは当時を振り返ります。
こうして2022年9月に西川町への寄付を実施。その後、両者で対話を重ねるなかで関係が一層深まり、2023年4月12日には包括連携協定を締結。自己処理型トイレの実証実験、地域交流、キャリア教育といった分野での協働がスタートしました。
【画像】自己処理型トイレの3Dイメージ
現場で磨かれた技術が製品化へ。寄付も全国へと展開
自己処理型トイレの実証実験は、西川町の長沼公園で行われました。もともと上下水道の老朽化により使用が難しくなっていた公衆トイレの代替として設置され、町民や学生が実際に利用する形で検証が進められました。
特に重要だったことが、豪雪地帯ならではの冬場の環境です。「自己処理型トイレは上下水道インフラに依存せず、土壌内の微生物の力で排泄物を分解する仕組みをもっています。その微生物が氷点下でどうなるのか、それを現地で確認できたのは有り難いことでした。結果として、微生物は死滅せず、分解機能を維持できることが確認されました。一方で、初期段階ではタンク容量が不足し、色のついた水が出てしまったこともありました。こうした問題を一つ一つ改善し、実証実験を重ねたことが製品化につながっています」と成果を語る水登さん。
こうした自治体と企業、双方のニーズを満たす取り組みが評価され、本実証実験は、山形県西川町と共同で取り組んだ防災インフラ投資プロジェクトとして、2025年2月、内閣官房ホームページの「民間資金による防災インフラ投資に関する参考事例集」に掲載されました。
さらに、製品化の目処がついた2024年には「商品を知ってもらいたい」という想いから、幅広い地域の自治体に対して企業版ふるさと納税を活用した寄付を実施。寄付を通じて自治体との接点を広げ、自己処理型トイレの可能性を全国へと伝える取り組みを進めています。
【画像】現場で作業する株式会社ローヤルエンジニアリングの社員
ゼロから一を生み出す挑戦。自己処理型トイレに込めた想い
自己処理型トイレの開発は、同社にとって新たな挑戦でした。「ゼロから一を生み出すことは、やっぱり心躍るものがあるじゃないですか」と水登さんは語ります。「『下町ロケット』のように、自分たち発信で何かを形にしていくワクワク感を社員にも感じてほしかったのです」と、挑戦の背景を明かします。
平時には上下水道に接続して通常のトイレとして使用でき、災害時には上下水道から切り離して自己処理型トイレとして機能する「フェーズフリー」の考え方を取り入れている点も大きな特徴です。この仕組みについては実用新案も取得しており、2025年10月には製品化を実現しました。
【画像】子どもたちが西川町を訪れる自然体験企画の様子
トイレだけでは終わらない、人と人をつなぐ、西川町との関係
西川町との関係は、トイレ開発だけにとどまりません。同社は、地元・東京都豊島区の子ども食堂と連携し、社員の子どもと東京都豊島区の子供たちとの自然体験企画を継続的に実施しています。「いま、体験格差という言葉もありますが、都会ではなかなかできないことを西川町で体験させてあげたかったのです。また、西川町の中学生が修学旅行で当社を訪れる社内見学も行われています。建設業は衣食住を支える大事な仕事ですが、その仕事内容は意外と知られていません。だからこそ、知ってもらう機会をつくりたいのです。中学生たちには、建設業のことだけでなく私自身の生き方、考え方などもお話させてもらっています」と水登さんはにこやかに話します。
こうした人との関わりを通じて、子どもたちだけでなく同社社員も刺激を受け、地域とのつながりがより深まっています。
【画像】熱い想いを語る、株式会社ローヤルエンジニアリング代表取締役の水登健介さん
企業版ふるさと納税は「寄付」ではなく「挑戦の入口」
西川町との取り組みを振り返り、水登さんは「やってみて、本当に意味のあることだったと感じています」と語ります。自己処理型トイレの製品化という成果だけでなく、企業としての姿勢そのものが変わったことに、大きな手応えを感じているといいます。
「建築設備業は受注型が基本で、下請けの仕事が中心になりがちです。でも、こちらから地域に発信し、関わりをもっていく経験ができたことで、受け身ではなく自分たちから動くという感覚をもてるようになりました。自治体や地域の人と直接対話しながら取り組みを進めた経験は、当社にとっても良い刺激になっています」と水登さん。
企業版ふるさと納税は、単なる寄付制度ではありません。地域と関わり、対話を重ね、自ら動くなかで、企業の在り方や働く人の意識にも変化をもたらします。西川町との協働は、同社にとって、事業の可能性を広げると同時に、企業としての姿勢をあらためて見つめ直す機会となったようです。
語り手
株式会社ローヤルエンジニアリング 代表取締役
水登健介さん
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