「個別最適な学び」と「まちの拠点」。奈良県生駒市の新しい学校づくり

【画像】「生駒南義務教育学校(仮称)」のクラスポッド(教室)の設計パース
奈良県生駒市では、2029年度の開校に向けて、義務教育9年間の学びを一体的に捉えた「生駒南義務教育学校(仮称)」の整備を進めています。本プロジェクトは、老朽化した校舎の建て替えにとどまらず、これからの時代の学びに対応した新しい教育環境を整え、地域住民が集う交流スペースや高度な防災拠点としての機能も備えた「まちの拠点」をつくる挑戦です。こうした学校づくりにかける想いや、企業版ふるさと納税を通じた公民連携への期待について、生駒市教育委員会事務局学校支援課教育政策室長兼教育総務課課長補佐の杉山史哲さんと、生駒市教育総務課主幹兼新しい学校づくり係長の中本英明さんにお話を伺いました。
限界を迎えつつある「標準的な学校」と、9年間を見通した学校づくりへ
大阪都市圏のベッドタウンとして発展してきた生駒市では、これまで教育に力を入れ、さまざまな教育施策に取り組んできました。一方で、近年は子どもたちを取り巻く状況が大きく変化し、教育環境のアップデートが急務となっています。こうしたなか、建設から約50年が経過した生駒南小学校と生駒南中学校の老朽化対策を契機とし、両校を統合して9年間を一体的に捉える新しい義務教育学校の整備を進めることとしました。
杉山さんはこう語ります。「これまでの『標準的な学校のあり方』だけでは、多様な子どもたちの学びや育ちを十分に支えきれない場面が出てきています。また、小学校から中学校への進学時には、学習や生活環境の変化が大きな負担となることもあります。9年間を一体的に捉えることで、発達段階に応じた切れ目のない支援が可能になり、異年齢の関わりを生かした学びをつくることができます。校舎の建て替えを機に、これからの時代に必要な学びや、インクルーシブな環境を、教育と建築の両面から考えるプロジェクトです」

【画像】生駒南小学校で行われている「自由進度学習」の風景
子どもたちが自分で学び方を選ぶ「個別最適な学び」の空間づくり
新校舎の最大の特徴は、市全体で推進する「個別最適な学び」を空間の面から支える設計です。従来の「前を向いて座る四角い教室」の概念を取り払い、子どもひとりひとりがその時々の学びに応じて、場所や学び方を選べる環境を目指しています。
杉山さんは「一人で集中して学べる家具や、少人数で対話しやすいテーブル、可動式の机や椅子などを組み合わせ、子どもたちが安心して過ごせる居場所づくりのための備品を柔軟に整えたいです」と説明します。
また、設計に携わる中本さんは次のように補足します。
「空間の制約をできるだけ減らし、使い方に選択肢を持たせることで、子どもたちが自分に合った場所や過ごし方を見つけ、自分らしく学べるきっかけになるような学校になればと願いながら設計しています」

【画像】図書スペース「メディアフォレスト」の設計パース
「貸し教室」ではない、多世代が交わる拠点と防災機能
この新しい学校は、子どもたちだけの場所ではなく、地域の多様な世代が集い、学び合う「まちの拠点」としての役割も担います。図書スペース「メディアフォレスト」を建物の中心に据え、特別教室とともに地域へ開放する構想です。
杉山さんは「学校開放を単なる『貸し教室』として捉えるのではなく、子どもたちの学びと地域の活動が自然につながることを大切にしたいと考えています。地域の方が学校に関わることで、子どもたちは多様な大人の生き方や知恵にふれることができます」と語ります。
さらに、災害時には多様な人が安心して過ごせる避難所としても機能します。
「体育館に近いランチルームは、災害時の炊き出しにも活用できるようにし、断水時にも使えるマンホールトイレも備えます。さらに、避難エリアと学校活動エリアを分けて運用できるようにすることで、避難所としての機能を確保しながら、学校の教育活動をできるだけ早く再開できるよう想定しています。普段から地域の方に使っていただき、身近な場所になっていることが、災害時などいざという時にも真に機能する防災拠点になるはずです」と、防災機能について熱く語る中本さん。

【画像】新しい学校の開校に向けた教員研修の風景
建設費高騰の逆風を、全国の企業とつながる「公民連携の入り口」に
こうした考え方を設計に反映しながら整備を進める一方、近年の物価高騰もあり、建設費は当初の想定を上回る見込みとなりました。
「私たちが目指しているのは、単に新しい校舎を建てることではありません。学び方に応じて選べる空間や家具、地域との交流、防災機能など、これからの時代に向けた新しい学校づくりの考え方を具体的な環境に落とし込もうとしています。そのため、一般的な四角い教室を基準として設定されている補助金だけでは、私たちの目指す学校づくりは実現できません。今回『企ふるオンライン』を活用した理由は、資金面でのご支援だけが目的ではなく、全国の企業の皆様に生駒市の学校づくりへ参画していただくためのきっかけにしたいと考えたからです。寄付を入口に、教育やまちづくりに関心のある企業の皆様と出会い、様々な連携の可能性を広げていきたいです」と、展望を語る杉山さん。

【画像】新しい学校づくりに関わる職員。後列右から2番目が杉山史哲さん、3番目が中本英明さん
「自分らしく輝けるステージ・生駒」をともにデザインする
生駒市の将来都市像である「自分らしく輝けるステージ・生駒」。その考え方を、子どもたちの学び舎と地域との関わりの中で形にしていくプロジェクトが、この新しい義務教育学校です。
中本さんは「教育のコンセプトをどこまで空間として具体化できるかを考えながら設計を進めています。この新しい学校づくりの考え方に賛同し、一緒にお力添えいただける企業の皆様とのご縁を楽しみにしています」と呼びかけます。
最後に、杉山さんは力強く語りました。「これからの社会は、正解のない課題に向き合い、多様な人と協働しながら新しい価値を生み出していく力が求められます。皆様からのご支援は、子どもたちの学びの環境を豊かにするだけでなく、地域の未来を支える大きな力になります。生駒市が目指す、市民ひとりひとりが主役となるステージをともに輝かせるパートナーとして、ぜひこの挑戦に参画していただきたいです」
語り手
生駒市教育委員会事務局学校支援課教育政策室長兼教育総務課課長補佐 杉山史哲さん 生駒市教育総務課主幹兼新しい学校づくり係長 中本英明さん
| 自治体 | 奈良県生駒市 |
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