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国際バカロレア教育でまちの未来を担う子どもたちを育てる~高知県香美市~

高知県香美市

公開日 : 2026年 7月21日人材育成子育て

取材者日下智幸 / 瀬戸株式会社

IB教育を進める香美市立大宮小学校の授業風景

【画像】IB教育を進める香美市立大宮小学校の授業風景

高知県香美市では、国際バカロレア教育の推進に力を入れています。国際バカロレア教育とは、探究心、知識、思いやりに富んだ若者の育成を目的とする国際バカロレア(IB)機構が提供している国際的な教育プログラムです。公立小学校として初めて認定を受けた香美市の取り組みや、国際バカロレア教育への期待、まちの思いを紹介します。

世界が注目する国際バカロレア教育とは

高知県香美市が推進する国際バカロレア教育(=以下、IB教育)とは、スイス・ジュネーブに本部を置くIB機構が提供する世界基準の教育プログラムです。IB機構は「多様な文化の理解と尊重の精神を通じて、より良い、より平和な世界を築くことに貢献する、探究心、知識、思いやりに富んだ若者の育成」を使命に掲げ、グローバル化に対応できるスキルを身に付けた人材を育成するため、年齢別に4つの教育プログラムを提供しています。
香美市では、2021年に香美市立大宮小学校が公立小学校としては初めてPYP(3~12歳)認定校となり、翌年には香美市立香北中学校がMYP(11~16歳)認定校になりました。以来、小中一貫の体制で2つの学校でのIB教育に取り組んでおり、子どもたちの変化に手ごたえを感じているといいます。IB教育の推進には様々な費用が必要となり、財源として企業版ふるさと納税への期待を寄せています。

小中一貫でIB教育に取り組む香美市ののどかな景観

【画像】小中一貫でIB教育に取り組む香美市ののどかな景観

探究的な学びを取り入れたい! IB教育との出合い

「IB教育を導入した当時の市の教育理念は『郷土を愛し、未来を拓く人づくり』でした」と話すのは、香美市立大宮小学校校長、田村香江さん。香美市教育委員会においてIB推進事業立ち上げから認定を受けるまで携わり、現在も事業を推進する役割を担っています。「これからの時代を生き抜くためには、探究をベースにした学びで子どもたちを育てたい。それによって、生涯にわたって探究的な学びが沸き起こり、活気あるまちづくりにもつながっていくだろうという考えからこの取り組みが始まりました」
そこで出合ったのがIB教育です。IB機構が主催するワークショップに参加したところ、探究をベースにした学びであることや地域が学びのコミュニティであることなどが、市が理想とする教育にぴったりと合致。導入を決断したといいます。「導入時には市民からの不安や反対の声もありましたが、大宮小学校が認定を受けIB教育がスタートしました。翌年には香北中学校も認定を受け、2校による小中一貫体制で教育を行っています」

探究を軸にした授業では児童の主体性が鍛えられます

【画像】探究を軸にした授業では児童の主体性が鍛えられます

子どもたちの成長に目を見張る。IB教育の成果に手ごたえあり

「探究を軸にした教育を行うことは、高校受験の際に不利に働かないかと心配の声もありました」と話す田村さん。しかし、これまでのところでは子どもたち全員が希望の進路に進めているといいます。「子どもたちは、明確な目的をもって進路を選ぶようになりました。中学校では、地域のニーズを探究し、奉仕活動を通じた学びを実践する『コミュニティプロジェクト』に取り組みます。このプロジェクトを通して子どもたちは興味・関心のあることを学び、地域のニーズや地域課題などについても探究を進めます。これは、自分のキャリア形成にもつながっていて、高校選択の材料のひとつにもなっている事例もあります」
「最近わかったことが、小学校が素地となり中学校で力を発揮すること」と田村さんは話します。毎年実施している学力・学習状況調査においては、柔軟的方略や認知的方略などの数値が明らかに伸びているといい、高校受験に必要な学力もしっかりとついているといいます。「与えられる学びではなく、自らが問いをもち、問いを解決するためにどのように動けばいいかを考えられるようになった結果だと思っています」

地域の人々の参画により自分が暮らす地域への関心が高まります

【画像】地域の人々の参画により自分が暮らす地域への関心が高まります

香美市の学びのモデル校として取り組みを続けたい

このように、香美市ではIB教育によって子どもたちが変わりつつあります。しかしIB教育の認定は現在の2校のみに留め、今のところほかの学校に広げる予定はないようです。「探究的な学びは市が掲げる理念のひとつ。両校をモデル校に位置づけ、ここでの教育をヒントにほかの学校にも広げていきたい」と田村さんは話します。そういった意味で、2校によるIB教育の取組は今後も続けていく予定だといいます。
いっぽう、IB教育には様々な費用がかかります。「いちばん大きいのは、IB機構への年会費で、これが小中学校別々にかかります。また、新任の先生たちにはIB教育のワークショップに参加してもらい、知識や理解を深めてもらっています。ほかのIB教育認定校への視察も定期的に行っているので、これらの費用を捻出する必要があります」
そこで、着目したのが企業版ふるさと納税でした。「持続可能な取り組みにするために、市の教育に力を貸してくださる企業を募集しています。人材育成を応援する企業としてのブランドイメージ向上が期待できるほか、学習プログラムへの参画なども検討しています。企業との連携のなかで学びを深めることができればと考えています」

IB教育では地域が学びの舞台になります

【画像】IB教育では地域が学びの舞台になります

様々な人との関わりのなかで子どもが育つまちづくり

IB教育の導入で、地域も変容しつつあるといいます。「これまで地域は『協力』するものでしたが、最近では『参画』に意識が変わってきています。子どもたちに何ができるかを皆さんが考え、提案いただくようになりました。教育を核にしたまちづくりにより、地域が元気になっていると実感しているそうです。
現在の市の教育理念は「郷土を愛し、探究的に学び、未来を創る人づくり」です。「子どもたちが未来を創ると考えたときに必要なのは、地域のなかで学び、それを社会や世界に拡げられること。自分たちに何ができるかを考え、行動し、実現できる子どもたちを育てたいという思いで取り組んでいます」と田村さんは力を込めます。
「これまでは、学校が子どもを育てる場所でしたが、いまは様々な人たちとの関わりのなかで子どもたちが育っています。このことを忘れないよう、様々な方々の力を借りながら教育を作り、子どもたちを育てていきたいと考えています」

国際バカロレア教育推進事業

語り手

田村香江さん

香美市立大宮小学校校長

田村香江さん

自治体

高知県香美市

 
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