震災からの復旧から復興へ。誰もが住みたいと思える町づくりを進めたい~石川県能登町~

【画像】能登高校の生徒が書いた復興への思い
2024年1月1日に発生した令和6年能登半島地震は能登地方を中心に甚大な被害をもたらし、被災地では現在も復旧・復興のための取り組みが進められています。復興にはまだ長い年月がかかると見込まれるなか、被災地の自治体は様々な問題に直面しています。復旧・復興の現状と課題について、石川県能登町の担当者にお聞きしました。
震度6強の地震がもたらした複合被害。復旧の状況を振り返る
「震災から2年。ようやくインフラの本復旧が始まったという段階で、復興にはまだまだ時間がかかるという状況です」と話すのは、能登町ふるさと振興課の玉地大輔さん。役場の職員という立場で、町の復旧・復興に向けた取り組みを進めています。「生活できるようになったとはいえ、いまだに多くの人が仮設住宅での生活を強いられています。生活インフラに関しては、上下水道などの整備も含めた本当の意味での復旧にはあと5年はかかると見積もられています」と続けます。
また、なりわいの再建も大きな問題となっています。例えば町の酒造産業の担い手だった3つの酒蔵はどれも被害が甚大で、事業再開には巨額の資金が必要だといいます。「国などからの補助金だけでは到底足りず、不足分を支援したいと考えても町の財政力が充分でないため、困難な状態です。また昨今の物価高も、なりわいの再建にとって大きな壁となっています」と玉地さんは顔を曇らせます。

【画像】震災直後の様子。能登町全体では約10,000棟の建物被害が確認された
目の前の課題解決に奔走する「復旧」フェーズはひと段落
震災からこれまでの期間、町職員は人々の生活を取り戻すことに無我夢中だったと玉地さんは振り返ります。「町として被害状況を把握して以来、職員一丸となって復旧に向けて全力で取り組んできました。私は、財政担当として町の財政健全化に取り組んでいましたが、発災によりすべてが変わってしまいました。毎日のように変わり続ける状況に対処し、目の前の課題をひとつずつ解決していくことで精一杯でした。全国の皆様からは様々な形で多くの支援をいただいており、復旧を後押ししていただいたことには感謝しかありません」と玉地さん。
これらの支援による資金に加えて、国などからの補助金などもフルに活用したといいますが、復旧にかかる費用はその額を大きく上回っていました。町の財源だけではまったく先に進めず、この2年間の復旧の過程で町の借金は倍以上に膨れ上がったといいます。

【画像】宇出津(うしつ)地区の「あばれ祭」。伝統文化・地域コミュニティの復旧の先駆けとして、震災の同年7月に開催された
復旧から復興へ。人が住み続けられる町づくりに向けて
こうした状況のなか、いま玉地さんが心配していることが住民の流出です。「本当の復興まであと10年かかるとすると、いま町に残っている人たちは揃って10歳、歳を重ねることになります。すでに住民の高齢化が進んでいたところに、今回の震災で多くの子育て世帯が町を離れてしまいました。10年後にやっと復興できたとしても、住む人がいなければまったく意味がありません」と話します。こうした状況を打破するためにも、少しでも早い段階から新たな希望をもたらす復興への取り組みを進める必要があるといいます。
今後、力を入れて取り組みたい事業のひとつが、役場の近くにあった活動交流拠点「ノトクロスポート」の再建だといいます。この施設は、空き店舗をリノベーションして活用したもので、移住・定住や起業・創業の相談の場として、あるいは地域活動を行う人のためのワークスペースなどとして活用されており、人と人が交わる地域課題の解決の場として機能していました。ところが震災により大きな被害を受け、補修は難しいとの判断から震災後に解体されてしまいました。「まずは人が集まる場所を作りたい。人が集まればアイデアが生まれ、行動につながっていきます。復興への足がかりとして、ノトクロスポートのような施設の再建が重要だと考えています」

【画像】企業版ふるさと納税による支援を行った金沢市の株式会社白山に感謝状が贈呈された
厳しい財政状況のなか、企業からの支援に期待
復興途中の人口流出が一番の懸念材料だという話す玉地さん。「誰もが、この町に残りたい、この町に住みたいと思ってもらえるような施策が重要と考えています。学校や児童館の再建、子育てに重点を置いた環境整備、温泉資源を活用した高齢者や地域の人たちの交流の場の再建など、様々な対応が地区ごとに検討されています」と話します。とはいうものの資金不足は深刻で、いますぐに取り組むのは難しい状況といいます。
「復興に向けた具体的な取り組みは、引き続き推進していく必要があります。そこで期待しているのが企業版ふるさと納税です。能登町の現状を知っていただき、復興事業を進めていけるだけの支援をいただけたら嬉しい」と玉地さん。

【画像】波穏やかな五色ケ浜
関係人口を増やすことが再生の鍵。町に関わる人を増やしたい
一方「活気あるまちづくりのためには、多くの人に関わってもらうことが大切」と、玉地さんは関係人口の重要さを強調します。「移住・定住してくれる人がいるなら本当にありがたいのですが、1年のうちの1日だけでもいいので、町に深く関わってくれる人を増やしていければ」と玉地さん。その第一歩が町への訪問です。「実際に町に来て、町の様子を見て、町のことを知ってほしい。そうすればきっとこの町を好きになってくれる。それだけのポテンシャルが能登にはあります。町に関わってくれる人を増やすことが町の未来を創ると確信しています」
玉地さんは、「ここに住み続けたい、関わり続けたい」と思われるような環境を整えることが町の責務と考えているといいます。「人口減少は避けられないにしても、ここに住む・住まないの垣根をこえて、連綿と受け継がれてきた能登の暮らしが残る町であり続けたい。能登町の未来は、今後の取り組みにかかっています。まずは多くの人に町のことを知っていただきたい。そのうえで、ご支援やご協力をいただくことができれば、こんなにうれしいことはありません」と玉地さんは言葉を結びました。
語り手
能登町ふるさと振興課
玉地大輔さん
| 自治体 | 石川県能登町 |
|---|