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「サスティナブル縫製工場」が生み出す、地域と企業の新しい共創モデル

公開日 : 2025年11月28日 モノづくり、 環境保全、 防災対策・復興支援

取材者 宮森祐巳子 / 言の葉・ライター

LED照明に切り替え、省エネと快適性を両立するサスティナブル縫製工場の作業風景

【画像】LED照明に切り替え、省エネと快適性を両立するサスティナブル縫製工場の作業風景

山形県南陽市に本社を構える株式会社ナカノアパレルは、2022年から「サスティナブル縫製工場」として改革を進めてきました。「“サスティナブル縫製工場”がモノづくり文化にイノベーションをおこす」という経営理念を掲げ、環境対応だけでなく、効率化、地域との共生までを含めた新しい価値づくりに挑戦しています。
近年では災害時の避難所における問題に着目し、消臭効果の高い繊維を生かした事業をスタート。その際に企業版ふるさと納税を活用し、地域と企業の共創モデルをつくり上げています。今回は、取り組みの背景について、代表取締役社長の中野一憲さんに伺いました。


サスティナブル縫製工場への挑戦と理念の確立


同社がサスティナブル経営に舵を切ったきっかけは、Apple Inc.のサプライチェーン方針の変化でした。
「Appleが100%再生可能エネルギーでの製造を目指すと掲げたことで、日本の製造業もその対応に追われているという話を耳にし、この流れはアパレル業界にも来ると確信しました。いまのままでは取り引きを続けられなくなるという危機感を覚えると同時に、先駆けて対応すれば優位に立てると考えたのです」と中野さんは当時を振り返ります。そこで半年間の勉強会を重ね、2022年11月に「サスティナブル縫製工場」化を発表しました。
「環境対応はもちろんのこと、働き方や効率化も含めての『持続可能性』だと考えました。業務効率を上げて、資料づくりや形式的な仕事を減らし、創造的な時間を確保することもサスティナブルなのです」と中野さんは語ります。
さらに同社では地域とのつながりも大切にしており、月に一度のゴミ拾いや地域イベントの開催によって、地域の人との会話が生まれ、社内コミュニケーションの活性化にもつながっているといいます。

現場の作業効率と精度向上のため、生産管理基幹システムを改修

【画像】現場の作業効率と精度向上のため、生産管理基幹システムを改修

企業版ふるさと納税との出合いと「事業化」の発想


広く地域に貢献する方法を探していたとき、中野さんはriver(企業と自治体をつなぎ、地域課題の解決を支援するプラットフォーム)の小坪拓也さんと出会いました。小坪さんから企業版ふるさと納税制度の説明を受け「寄付を単発の善意で終わらせず、事業の一部として位置づける」という考え方に共感したといいます。
「もともと自社で蓄積してきたノウハウや技術、製品を社会課題の解決に役立てたいと思っていました。企業版ふるさと納税の仕組みなら、広域の自治体とつながりをつくれます。寄付はその関係づくりの入口なのです。また、高い税額軽減効果も寄付への決断を後押ししてくれました」と中野さん。

主体的に働ける人材の育成と、個々の人生に合った働き方を支える環境づくりを推進

【画像】主体的に働ける人材の育成と、個々の人生に合った働き方を支える環境づくりを推進

アンケートを実施し、防災意識の高い自治体と連携


日本における地域貢献を考える上で外せないキーワードが「災害」です。
「災害時の避難所における課題に、我が社なりの切り口で役立てないかと検討した結果、『消臭効果の高い繊維を活用した下着』という案が出てきました」と中野さんは経緯を語ります。「災害時の避難所では、臭いなど衛生面の問題が深刻な課題です。私たちの消臭繊維は、そうした課題に直接貢献できると考えました」
南海トラフ地震などの大規模災害を想定し、防災への関心が高い自治体にアプローチする方法を考えていたとき、小坪さんからアンケート調査を提案されました。そこで消臭繊維の情報も盛り込み、ボリュームのあるアンケートを実施。集まった回答を見てみると、丁寧な長文回答を寄せた自治体もあり、その関心の高さに驚いたそうです。そのアンケート結果と予算をもとに検討し、北は北海道から南は九州まで幅広い地域の11自治体への寄付を決断。中小企業ならではの意思決定の速さも強みです。「大企業よりフットワークが軽い分、すぐに動けます。機動力こそが中小企業の強みです」と中野さんは語ります。

消臭効果の高い下着・ソックス・タオル・Tシャツ。下着は前開きなしの男女兼用ボクサーパンツタイプ

【画像】消臭効果の高い下着・ソックス・タオル・Tシャツ。下着は前開きなしの男女兼用ボクサーパンツタイプ

自治体の「仲間」との「共創」が生む、新たな商品


現在、同社では避難所向けに消臭効果の高い下着やソックス、タオル、Tシャツなどを開発しています。これらの試作品のテストについて各自治体との相談を進めており、今後は自治体を通じてプレゼントとして配布、幅広い世代を対象とした利用者アンケートを実施し、改良を重ねる計画です。
「消臭効果の高い各商品を一つのパッケージにするのか、各商品ごとでの販売にするのか。日常的にも使いつつ避難所でも使えるようにするには、どうすればいいのか。まだ検討段階のこともありますが、試作品を実際に身につけていただいて、利用者の生の声を集められることは有り難いですね」と中野さん。
寄付をきっかけとして、山梨県韮崎市の避難所体験イベントに招かれたり、東京で開催された静岡市交流会に招かれて関係者とのつながりが生まれたりと、自治体との関係は確実に広がっています。「行政の方々がとてもフレンドリーで『一緒に取り組む仲間』という感覚になれるのです。いまは、避難所体験イベントに向けて防災用の高機能寝袋も開発中です。羽毛布団並みの暖かさを目指していますが、もしイベントで『暖かくない』と言われたら、そこからさらに改良を重ねることになります」と笑いながら語る中野さん。

株式会社ナカノアパレル代表取締役社長 中野一憲さん

【画像】株式会社ナカノアパレル代表取締役社長 中野一憲さん

社会の仕組みを支えているという実感にワクワク


「企業版ふるさと納税を通して、それまで関わりのなかった地域と出合えました。そして行政の方と直接対話する機会を得られるのは、実に有り難いことです。我が社のように目標がある企業はもちろんのこと、明確な目標がなくても、企業版ふるさと納税は始めてみる価値があると思います。やってみることで、新しい出合いや気づきが生まれるでしょう」と語る中野さん。今後は、実証データをもとに製品化を進め、自治体との共同プロジェクトを広げていく予定です。
中野さんは最後にこう話します。
「洋服は『心を豊かにする』ものだと思いますが、今回、自治体と組んで避難所向け商品を開発することで『社会の仕組みを支えている』という実感までもつことができました。これはいままでにないもので、ワクワクしています。これからも、縫製を通して社会の役に立つものづくりを続けていきます」

語り手

代表取締役社長 中野一憲さん

株式会社ナカノアパレル

代表取締役社長 中野一憲さん

会社・団体名

株式会社ナカノアパレル

寄付したプロジェクト 【株式会社ナカノアパレル】

 
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